糖尿病(1)-4 運動療法について
糖尿病について第4回目の今回は運動療法についてお話ししていきます。
運動療法は大きく分けて2種類あります。
1.有酸素運動 2.レジスタンス(筋肉)運動
阪堺病院へ通院してくださっている皆様は運動に積極的な方が多いように思えます。食後1時間後に散歩やジョギング、スイミングなどの運動に取り組まれています。
当院にはS.C.A.(ストレングス&コンディショニングアカデミー)と言われる一般の方が使用されるトレーニング施設も併設されています。
糖尿病で通院いただきながら、運動療法の一環として、体幹や筋力トレーニングに励まれている方もいらっしゃいます。ご興味のある方は主治医にご相談ください。
1.有酸素運動
糖尿病の運動療法で最も基本となるものです。長い期間、無理なく楽しく取り組める事が最も重要です。自分が趣味にしているスポーツなどを運動療法に取り入れることが出来れば、良いかもしれません。
運動と一言にいってもどれくらいの運動をすればよいのかというと・・・一例ですが
「忙しい」「時間がない」「続けられない」と、なかなか運動することができない場合は、以下を参照してみて下さい。
※ただし、注意点があります。
糖尿病の方はだれでも運動療法を行ってよいかというと、そうではありません。運動することによりかえって体の状態が悪化する場合もあります。
たとえば、
- 心臓や肺に病気を抱えている方
- 眼底の出血が認められる方
- 腎臓の働きが悪い方
などは、安静にしておく必要があります。
そのため、ご自身がトレーニングを行ってよいのかについては主治医の先生にご相談されるのがよいと思われます。
2.レジスタンス(筋肉)運動
糖尿病の運動療法というイメージから言えばあまり馴染みがないかもしれません。
しかし、筋肉で血糖を下げるメカニズムが明らかになり、最近クローズアップされてきました。皆さんの中には、1日1万歩ウォーキングに取り組んでいるのに、体重が減らない、血糖値が下がらないなど不思議に思われている方もいるのではないでしょうか。
その原因は、もしかしたら筋肉不足のせいかもしれません。
筋肉は運動することにより、糖分を取り込んで血糖を下げる働きをします。
その時GLUT4と言われる蛋白質が糖分を筋肉へ取り込む働きをします。
筋肉を刺激すると一時的(2日程度)にこのGLUT4が筋肉に増えることが分かっており、その間は普段以上に血糖を下げやすい体になっています。このため、2・3日おきに筋肉を刺激することは血糖が下がりやすい体を作るためには、とても大切なことになります。
反対に、筋肉量が少ない方は筋肉での血糖を下げる力が弱くなり、運動していてもあまり効果が得られないことになります。このため筋肉を刺激して筋肉量を増やしたり維持したりすることはとても重要なことです。
その他、筋肉は膝でクッションの役割をしてくれますので、筋肉が多くなれば関節を守る働きを期待できます。 片足立ちやかかと上げ、スクワットといった自宅でできる簡単なものから、ダンベルやチューブを使った本格的な筋肉トレーニングまで筋肉を刺激する方法は沢山ありますが、GLUT4が増えるのは、刺激された筋肉だけになりますので、とにかく色々な筋肉を刺激するのが大切です。
(1)椅子からの立ち上がりスクワット
足幅は肩幅に広げます。椅子から立ち上がり、ゆっくり座ります。
つま先と膝は正面に向け、立ち上がる際に膝同士がくっつかないように注意します。
バリエーションとして、もう少し難易度を下げたい方は手を前に伸ばして頂いても構いません。
(2)壁を利用した腕立て伏せ
肩幅より広く壁に手をつきます。
胸を壁に近づけていきます。
強度を上げたい方は、椅子やテーブルなどの高さを利用して下さい。
高さを下げていけばいくほど難しくなります。
腰が反らないように身体は一直線に保つようにして下さい。
(3)椅子を利用した二の腕のトレーニング
椅子がなければテーブルなど、体重を預けやすい安全な場所を利用して下さい。
手に体重を預けて、肘の曲げ伸ばしを行います。
肘が外側へ開かないように、まっすぐ後ろへ曲げます。
(4)かかと上げ
転倒予防のために、壁や椅子などで軽く身体を支えましょう。
かかとの上げ下ろしを行います。
小指側に体重が乗らないように、真ん中に体重を乗せるように意識します。
いずれも10回程度で構いませんので、色々な筋肉を使った運動を心がけるようにしましょう。